映画「グラディエーター」の感想

老若男女問わず誰もが楽しめる最高のエンターテイメント。

主人公のマキシマスが、ローマ帝国の新皇帝・コンモドゥスに忠誠をしめさなかったため、帝より一族の死を宣告される。マキシマス本人は処刑される直前に難をのがれるも、妻子およびその使用人達は全員焼け殺されてしまう。 妻子の死を知ったマキシマスは廃人のようになるも、数奇な運命から剣闘士となり、やがてその世界における一大スターまでにのしあがる。 そして、ついにはかたきのコンモドゥス帝と直接たいじするような状況となる。。 以上がざっくりとしたあらすじである。 詳細はwikiにゆずろう。 こみいった設定はないので万人に分かりやすいストーリーだ。

ローマ

本作品は、カッコいいシーンがとてもおおい。そのなかから印象的な場面をみっつほど。

まず、際たるは、コロッセオでザマの戦いを模した戦闘場面でのワンシーン。 白馬に乗って場内を疾駆するマキシマスが、味方の剣闘士が彼にむけて宙に放り投げたソード(剣)をダイレクトキャッチし、その剣をクルクルさせつつ手におさめる。 カッコよすぎる。もしもこんな芸当ができたら、万人の気持ちを一瞬でつかめるであろう。 機会があれば練習してひそかに会得したいくらい。 (というのも、高等技術ではあろうが非現実的でないと思われるキャッチのしかたであるから)

ソードをダイレクトキャッチするシーン

次に、処刑シーンをマキシマスが相手の油断から切り抜ける場面での一コマ。 マキシマスが処刑班のさいごの生き残りの兵に「近衛兵!」と怒鳴りつける。 その声とマキシマスの姿に異変を瞬時に察知した近衛兵は、のんでいた水筒を即座に(躊躇なく)投げ捨て、すばやく剣をぬいて猛然とマキシマスに襲い掛かる。 そのすがたたるや、非常な迫力。 この近衛兵は映画における重要な登場人物ではないにもかかわらず、惚れ惚れするような所作で「さすがはローマ帝国の一兵士だ」と感心せずにはいられない。 結局、主人公のマキシマスに剣をふるうも、返り討ちにされ馬上から倒れてしまうのだが。 しかし、マキシマスもこの近衛兵から太刀を浴びて深手を負う。 映画中、真剣勝負でマキシマスが太刀を浴びたのはこの近衛兵からだけだったのではないか。

みっつめは、映画冒頭の敵対部族との戦闘シーンにて。 ローマ軍と敵軍の歩兵どうしが交戦状態になったあと、マキシマス率いる騎兵隊が敵の背後にまわり突撃を開始する。 その騎兵隊の先頭をゆく、ローマの軍用犬が素晴らしくゆたかな跳躍をみせ、炎のきれめから疾駆するシーンに息をのむ。 直後、マキシマスが「Roman Victory !」と叫んで敵中に突撃を敢行。

軍用犬が炎のきれめから疾駆する場面
ローマ

これらみっつの戦闘シーン以外にも、コンモドゥス帝の衣装も個人的にはカッコよく見えた。 また、空から雲の切れ間にみえるローマ帝国の感動的な光景、興行師プロキシモがかつて自身が剣闘士として受けた際の万雷の喝采を追想するシーンも圧巻の演技でみどころだ。

本作は、「エイリアン」や「ブレードランナー」などで有名なリドリー・スコット監督の作品。 ちなみに、コンモドゥス帝の父、マルクス・アウレリウス帝は、ハリーポッター「賢者の石」のダンブルドア校長とおなじ俳優が演じている。 とりわけ迫真の演技だと感じたのは、コンモドゥス帝、その帝の姉であるルッシラ、興行師プロキシモ、マルクス・アウレリウス帝、コロッセオの支配人カッシウスなど。 くりかえし見たくなる演技がおおい。

主人公マキシマスのかたきとなるコンモドゥス帝の心理は、北斗の拳のジャギとかさなる部分がおおきいように思う。 愛憎や嫉妬、そうした感情から逃れられない人間の苦しみ-永遠に不滅と思われるテーマを随所にちりばめた本作は、まちがいなく楽しめる映画としていちどは鑑賞されることをおすすめする。
なお、2001年のテロ事件以降、本当におもしろい映画が激減したようにかんじるのはわたしだけだろうか。テロ事件以前は、「エイリアン2」、「逃亡者」など人間の想像力を刺激するおもしろい作品が多かった。 911以降を映画の低迷期とするならば、本作の「グラディエーター」は、それ以前の時代の最期をかざる屈指のエンターテイメント作品といえるだろう。

外部リンク

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